コスモスを花束にして

大好きな人。50代も後半に再会しました。過去の記事は一部非公開になっているものもあります。

スイッチ

帰り道、彼と私は車の中で手を繋いでいた。そんなのは私と彼の歴史上初めて。彼が運転しながら言った言葉。

「俺とあなたは死ぬまでこうやっていくんだよ。ジジイとババアになってもさ。どうだ?なかなかないぞ。」

私は「そうなったら素敵だね。歳をとるのも悪くないね。」

「悪くない」と彼。

ホントにそうなりたいと思った。大人の割り切った関係でいようと思っていた。もうドロドロした恋愛はこりごりだし、彼の家庭も私の家庭も壊す気など毛頭ない。ただこうしていられればいい。

彼が私の身体を褒めてくれる。現役だと言っても分からないと。私は恥ずかしくて「じゃあ、他で試してみようか」とちょっとふざけて言ったら

「試す…そしたら言えよ!?…止めろ!」

とピシャリと言われた。

「よかったー。やって来いって言われたらどうしようと思った。ハイ。」

何故か「ハイ」になる。嬉しい。こんな言葉も言われたことがない。私が他の人と付き合っていると言っても何も言ったことがない彼だったから。今迄はその場かぎり。次の約束なんてしたこともない。こうして2回、短い期間に会うのも初めて。

勝手に、私と彼の第2章、いや、第3章の始まりと思った。


翌日、彼からメール。私の身体を気遣ってくれた。大丈夫か?心配してると。ホッコリした。ありがとう。優しいね。


で、割り切った大人の関係と思った私なのに…その日から彼のことが頭から離れない。

青春の学生時代に抱いていた、叶わなかった恋の未練なのか。ううん、違う。彼は私にとっていつだって大好きな人だったんだ。他の人とどんなに深く付き合っても、彼に対する想いは何故か変わらなかった。会社の飲み会で男性が「女の人は男性を上書き保存なんだってね」と言ったことがある。その時の私の返答は、「そういう人もいるけど、別ファイルに保存の人もいるよ」だった。彼のこと。「1番好きな人と結婚できなくて良かったと思ってる。ずっと好きで居られるから」なんて酔った勢いで持論をぶちまけていた。

でも、彼の言うペースにならないようにしよう。だって、きっと私は彼を束縛したくなり、彼は束縛を嫌がり、結果、ダメになる。そうなりたくない。

なのに…。

私は身体と心にスイッチが入ってしまった。

休みの日に家にいると彼のことばかり考えしまう。非常にマズイ傾向。で、1人で前から見たかった映画を観て、気分転換のショッピング。夕方帰ろうとしたところに彼からメール。

「忙しいか」って。

「忙しくはないけど身体が困っている」と返す。

「どうした?何か問題発生か?」

「スイッチが入ったみたい」

「俺もしたい」

ストレートな人。

結局、前回から2週間程で会うことに。

そうならないようにしようと思っていたのに…私は会いたい気持ちが抑えられない。

抱き合った瞬間に

「大好き」と私の口が勝手に動いた!

彼は「ふふっ」と笑っただけ。こら!私の口!私に断りも無く勝手なことを喋るな!彼の重荷になりたくないから。


2回目はローションは無し。1回目と比べものにならないくらい身体が反応する。

イケなかった私を彼が気にしてくれる。

「どうやったらイク?」

「まだリハビリ2回目だから」

「次はイクこと目標な!」

そして帰りの車の中で、早速次会う日を決めてくれた。


次会う日までの間、私の心は揺れていた。会うたびに彼への想いが募ってしまう。やっぱり止めるべきだったんじゃないか?正しい道は「止める」こと。でも…こんな風に会えるようになった彼を失いたくない。彼はどうだろう?他にも彼女がいるんだから、どうってことないんだろう。私だって元に戻るだけ。もうよそうか?想いが乱れていた日、彼からメール。

「スイッチを入れられたのは貴女だけではないらしい。マズイ。」

途端に雲が晴れたようになった!嬉しい!やっぱり止めるなんて無理!

「私たちは2人でパンドラの箱を開けたのかもね。」

「分かる。ヤバイな。」

お試し

約束した日。その日まで彼から連絡は無し。携帯嫌いだと言っていた。ずっと見張られてるみたいでと。LINEなんかしなさそうだと思いながらLINEは?と聞いたときも「しない!」と。「やっぱりね」と私。仕事の休憩時間にスマホを見ると朝彼からメールが来ていた。

「今日は大丈夫か?」

「大丈夫だよ」簡単なやり取り。時間と待ち合わせ場所の再確認。


そして夜。彼の車。

「おい、開けすぎだぞぉ」日にちのことを言っている。前回会ってから今回まで2週間が長すぎだと。

「はい、おっしゃる通りです。それは認める。」とお詫び。

「なんか、ときめいちゃったよ、俺。お前は?」

「どうしようと思ってた。」笑ってる。

「薬局行かなくていいのか?」

「あれ?」

「うん」

「用意してきた」

「偉い!」褒められた。


軽く食事。アッサリ系のラーメンが食べたいと私が言い老舗のラーメン屋さんへ。カウンターで並んで食べ始めたら、丼を押さえていた私の左手を彼が押さえて自分のチャーシューを1枚ポイっと私の丼へおすそ分け。優しい微笑み付き。キュン!「ありがと」彼は微笑みのまま無言で食べてる。ズルイ俺様。こういうところが好き。


そして、いざ、ホテルへ。






部屋へ入って煙草を吸って、しばらくして、「シャワー浴びてきたら」

そっかシャワーね。ホント余りにもしばらくぶりでそんなことも忘れている。シャワーを浴びてソープで念入りに洗う。バスタオルで拭いて…えっと…服着るのおかしいよね?…どうすればいいんだっけ?…あ、バスタオルだけ巻いていけばいいのかな?

私の後に彼がシャワーを使う。私はソファに座ってついてるテレビを眺めて待つ。全然テレビが頭に入らない。

彼がベッドに入る。上掛けの右側をめくって無言の招き。身体を滑り込ませて抱き合う格好に。温かい。「こうやってるだけでもいいな」と私。これは本音。

「ホントに誰にも抱かれなかったのか?」優しく囁く。

「うん」「誰にも?」「誰にも」

そして私が巻いているバスタオルの留めてあるところを解く。ドキッとした!まるで初めてみたいに。

「痛かったら無理しないで言えよ」

「はい」……

「力抜いて」

「はい」……




実際、やはり潤い不足なので「痛い」というと、彼は「痛いか!?」と止めたり、ローションを使ってくれたり…そして私は足がつったようになったり。彼にゴメンと謝ってばかり。彼は「謝ることなんて何一つないさ」と優しい言葉。この俺様はベッドでは超優しいんです。昔から。初めての時も終わった後に私を膝に乗せて私の乱れた髪をブラシでとかしてくれたんです。その時はびっくりしました。当時彼を知る友人にその話をしたら、みんな「ええー!信じられない!」と言ってたっけ。

この日の途中から彼の私への呼び方が「お前」から「あなた」に変わった。





終わってピロートーク。私はイクことは出来なかったけど満足していた。彼は「いかせてやりたかったな」と言ってくれた。ありがとう。その言葉だけで満足だよ。


彼は私には安心感と信頼があると言ってくれた。コイツは大丈夫な女だと。だからとても気持ちが良かったし、いつになく元気だったと。最近こんなにならないぞ!なんて言ってくれた。嬉しい。そんな風に言ってくれて救われる。


私は男の人と付き合うと束縛したくなるしヤキモチ焼くからダメだよねって。でも、貴方とは不思議とそうならないんだよね、なんて話をした。

彼は「束縛しようとしても無駄だと分かっているからじゃないか?」

そして私の肩を抱きながら

「なぁ!これからたまにこうしないか!?」

「まぁ、たまにね。1か月かそれくらい…」

「いや!治療が必要だよ!あなた!1週間とか2週間おきくらいに!」

「そんなに頻繁に会ったら私貴方を縛っちゃう…」

「次、早いうちがいいぞ!」

もしもーし、私の話聞こえてます?

あーーー駄目だ。またキラキラした目をして。新しいオモチャ発見!って顔してる。

凄いいい事思いついた!って顔してーーー。

私はこの人のこの顔の前では、いつも無力だ。

準備

抱きしめてもらうはずだったのに、彼の提案の受け答えに気をとられ、すっかり忘れて帰ってきてしまいました。

(試すねぇ…)

私も正直なところ興味がありました。

このまま枯れたくない、と言う思いも。

50代女のあがきというか、焦りだと思います。


翌日、会社で予定を確認する。確認する前から彼が言ってきた来週は無理だと分かっていた。会社の飲み会が入ってる。絶対出なきゃダメなヤツ。いくら子供が皆成人して比較的自由に動けるようになった身とは言え、1週間に2日夜外出するのは気がひける。でも多分後ろめたいという気持ちが大きいんだろう。本当に仕事の用だったら何とか出るようにするんだろうから。こんな倫理の垣根が低い私でも良心の呵責というものは最低限持ち合わせているみたい。

その次の週だったら…比較的出やすいな…って私、すっかりその気になってるじゃん!

自分に確認する。

(もう止めたんじゃなかった?)

彼の言葉を思い出す。

「いつ死ぬかも分からないんだぞ」

これは最近同級生が事故で亡くなったり、近しい友人の奥様が亡くなったから。

(そうだよね。あの時…って後悔したくないよね) だんだん自分に都合のいい思考に傾いていく。


結局、再来週ならとメールを送ってしまった。

彼から「よろしく!」

私、「私のほうがよろしくです」

「ちと緊張するよな」

「だいぶ緊張する!」という変なメールのやり取り。


そうは決めたものの、さぁ、どうしよう!

ローション…買わなきゃ。ネットで買えるけど…家族に見つかったらとか考える。いくら何でも言い訳がつかない。ドラッグストアで直接買った方が安全だと判断。

買った!!!超恥ずかしかったけど、そこはおばさん、平然を装いすまして買った。

5回分使い切りタイプ。使用期限がある。2020年9月まで。(2年間であと4回お願いねって言ってみるか)なんて考えて。

で、自分の身体を鏡で見る。胸がない。やっぱり恥ずかしい。この身体を見られるのか?

ナイトブラを買った。これはネット。少しでも?2週間でどうなるものでもないことは百も承知。

無駄毛の処理…ボディクリームで身体のお手入れ…下着は?何着て行く?等々…なにやってんだ私?


そして緊張の約束した日となりました。